起業を検討している人にとって、事業計画書の策定、ロゴや名刺、Webサイトの制作、法人登記などやるべきことは少なくありません。
そして、起業準備の中で重要なものとしてオフィスの選択があります。業種にもよりますが、起業直後はできるだけ経費の支出を抑えなくてはなりません。
そのため、人件費に次いで高額なオフィスの賃貸料をいかに削減するかは、順調なスタートを切るうえで非常に重要な問題です。そこで今回は、オフィスにはどういった選択肢があるのかについてご説明します。
目次
起業するときのオフィス選び
現在、新たな小規模法人の設立が増加しています。
東京商工リサーチが2018年5月に発表した「2017年全国新設法人動向」によると、2017年に新しく設立された法人は13万1,981社。8年連続で増加しているという結果が出ています。特に資本金500万円以下の小規模法人の増加率が著しく、この傾向は今後も続いていくことが予測されます。
中小企業庁の定義によると、小規模法人の従業員数は卸売・サービス・小売業は5人以下、製造・建設・運輸業(卸売・サービス・小売業以外)で20人以下となっています。
また個人事業主として法人登記をする場合は、従業員数も自分1人のみといったケースも少なくありません。そのため従業員が多い中規模、大規模法人に比べ、オフィスの形態も比較的自由に選択が可能です。
できるだけオフィス賃貸料を抑えつつ、快適に業務を行える5つのオフィス形態をご紹介します。
自宅オフィスは光熱費の一部を経費として計上可能
個人事業主として起業する際、もっともコストをかけずに構えることができるのが自宅オフィスです。
文字通り自宅の一部をオフィスにしたもので、別途、オフィスを借りるコストが抑えられること以外に、通勤にかかる時間、交通費などのコストを抑えられることも大きなメリットです。
また自宅でかかる水道光熱費の一部を、経費として計上できることも自宅オフィスならではのメリットです。
自宅オフィスのデメリットは、特に結婚してお子さんがいる場合、公私の区別が難しいこと。そして自宅がマンションやアパートなどの賃貸住宅の場合、法人登記ができない場合があることです。さらに賃貸住宅は、金融機関からの融資が受けにくいといったデメリットもあります。
賃貸オフィスは対外的な信頼を得やすい
賃貸オフィスとは、法人として賃貸契約を結んだもので、自社だけでスペースを専有することができるオフィスです。起業の時点で従業員数が5~20人といった場合、ある程度の広さが必要になるため、おすすめのオフィス形態です。
メリットとしては、自社オフィスということで対外的な信頼を得やすいこと、自社だけでスペースを専有できるため、内装やレイアウトなどの自由度が高いことです。
デメリットは、ほかのオフィス形態に比べ賃貸料が高いこと、入居時の保証金や移転時の原状回復工事に多額の費用がかかることです。
バーチャルオフィスはスペースではなく住所を借りるオフィス
仮想事務所という意味を持つバーチャルオフィスは、ほかのオフィス形態と異なり、作業スペースとしてのオフィスではなく、本社の住所を借りるためのオフィスです。業務上ほとんどオフィスにいない、実際の作業は自宅や別の場所で行うが、会社としての住所が必要といった場合に便利なオフィスです。
バーチャルオフィスのメリットは、ほかのオフィスに比べコストを大幅に抑えられること、通常であれば数百万円のコストがかかる都心一等地の住所を低価格で利用できること、プライバシー保護の面から個人事業主が自宅をオフィスとして登記するリスクを回避できることなどです。
デメリットは、業種によっては登記が困難であることが挙げられます。
レンタルオフィスには設備や備品をそろえる必要なし
レンタルオフィスとは賃貸オフィスと違い、自分たちで基本的な設備や備品をそろえる必要がないオフィスです。
例えていうなら、必要なものがそろったモデルルームで業務を行うといったイメージで、初期投資のコストを大幅に抑えられることがメリットです。また月極め、時間極めでの利用も可能なので、従業員が増えた場合にもすぐに対応可能です。
デメリットは、オプションをフルに利用した場合、賃貸オフィスよりも賃貸料が高くなってしまうことがあること、レンタルオフィスの運営元の都合により、急に契約ができなくなってしまうリスクがあることなどです。
シェアオフィス・コワーキングスペース
シェアオフィスとは、複数の企業、利用者が同じ場所をシェアする形で業務を行うものです。ただし、利用者ごとに個室が用意されている場合も多いのが特徴となっています。
これに対しコワーキングスペースは、シェアオフィスとほぼ同義ですが、個室ではなくオープンスペースであることが一般的です。
メリット・デメリットはどちらもほぼ共通していて、ほかの利用者との情報共有やコラボレーションの可能性があること、場所によってはミーティングスペースも設置されていることなどです。
デメリットは、プライバシーの確保が困難であること、そしてセキュリティリスクが高いことです。
業種や従業員数によって最適な選択を
ここまでさまざまなオフィス形態をご紹介してきました。
それぞれに特徴やメリット・デメリットがありますが、どのオフィスが最適かは自身の業種や従業員数によっても異なります。
個人事業主で、とにかくコストを抑えたいのであればバーチャルオフィスがおすすめです。10人程度の従業員がいるのであれば、賃貸オフィスを借りるのがよいでしょう。また、作業は自宅などで行えるのであれば、本社住所として借りることができるバーチャルオフィスがおすすめです。
今回のコラムを参考に、それぞれの状況に合わせ最適なオフィスを選択してください。
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