これから法人を設立される方の中には、銀行の法人口座を開設することに不安をお持ちの方も多いでしょう。
特に「バーチャルオフィスでは法人口座の開設が難しい」というようなネット上の記事を見て、バーチャルオフィスとの契約自体を躊躇している方もいるでしょう。
また、既にバーチャルオフィスと契約して法人は設立したが、いくつかの銀行で口座開設を断られてしまい、バーチャルオフィスの移転を考えている方もいるでしょう。
結論から申し上げて、バーチャルオフィスを利用して銀行の法人口座を開設することは可能です。
ただし、開設しやすい銀行とそうでない銀行があること、契約することでプラスになるバーチャルオフィスとそうでないバーチャルオフィスがあることは事実です。
そのため、本記事ではバーチャルオフィスを利用してネット銀行で法人口座を開設する方法を解説します。
既にネット銀行と限定していますが、特に新設法人の場合はネット銀行がおすすめですので、その理由も含めてご覧いただければ幸いです。
バーチャルオフィスを利用して銀行の法人口座を開設するまでの流れ
まず、バーチャルオフィスを利用して銀行の法人口座を開設するまでの流れを説明します。法人設立済の方は必要に応じて読み飛ばしてください。
バーチャルオフィスと契約する
これから法人を設立するという方も、バーチャルオフィスが提供する住所を利用するためには、バーチャルオフィスとの契約が必要です。
多くの場合、個人で利用契約の申込を行い、法人設立後に契約主体を法人に変更します。
現時点で契約するバーチャルオフィスが決まっていない方は、以下の記事を参考にバーチャルオフィス選びを進めることをおすすめします。
参照:【2022年度版】東京23区内でおすすめの法人登記ができるバーチャルオフィス一覧
バーチャルオフィスの住所を利用して法人を設立する
バーチャルオフィスと無事に契約できたら、提供される住所を利用して法務局で法人設立の登記を行います。
株式会社を設立される場合は公証役場での定款認証等、少し手続きが複雑ですが、合同会社の設立は比較的簡単です。
自分自身で行うこともできなくはないですが、時間に余裕がなく金銭的に余裕がある場合は代行してもらってもよいでしょう。
バーチャルオフィスの運営者に利用契約証明書の発行を請求する
法人の設立登記が完了したら法務局で履歴事項全部証明書(いわゆる登記簿)と印鑑証明書、印鑑カードを受け取りましょう。
しっかりとしたバーチャルオフィスでは、法人設立のタイミングで契約主体の変更手続きが必要ですので、会員サイト等から手続きをします。
また、銀行での法人口座開設時に本店所在地の賃貸契約書等の提出が必要になりますので、バーチャルオフィスの運営者に利用契約証明書(バーチャルオフィスは賃貸契約ではなく利用契約のため)の発行を請求します。
銀行(金融機関)に法人口座開設の申込を行う
利用契約証明書が手元に来たら(PDFデータ等で問題ありません)、いよいよ銀行に法人口座開設の申込を行います。
銀行ごとに審査フローや必要となる提出資料に違いがありますので、詳細は各銀行のホームページから確認するようにしてください。
バーチャルオフィスを利用する場合はネット銀行がおすすめ
バーチャルオフィスを利用して銀行の法人口座を開設する場合、ネット銀行での開設がおすすめです。
ネット銀行をおすすめする理由はこれから紹介します。
おすすめの理由① 新設法人でも比較的審査に通りやすい
ネット銀行は、メガバンクや都市銀行に比べて、新設法人でも比較的審査に通りやすいと言われています。
もちろん、メガバンクや都市銀行で新設法人の口座開設が一切できないというわけではありませんが、ネット銀行に比べるとこれまでの法人としての実績が重視される傾向があります。
そのため、どうしてもメガバンクや都市銀行でなくてはならない理由がない限りは、まずはネット銀行で法人口座を開設することがおすすめです。
おすすめの理由② 口座開設までのスピードが早い
ネット銀行の申込は、ウェブ上の申込フォームを回答し、必要に応じて書類を送付するだけで完了します。
本人確認がeKYCで完結してしまうケース等では、最短で即日開設できてしまう場合もあるようです。
メガバンクでは、申込フォームの回答、書類送付に加え、ウェブや現地での面談、追加資料の提出依頼などへの対応もあり、開設までに最低でも1ヵ月はかかってしまうようです。
おすすめの理由③ ネットバンキング機能の維持費がかからない
ネットバンキングはインターネットを利用した銀行などの金融取引のサービスで、振込や入出金明細の確認などをパソコンやスマートフォンなどからも利用できるサービスです。
この機能はメガバンクも取り入れていますが、別途維持費が発生する場合がほとんどです。もちろんネットバンキングを利用せずに店舗での振込等も可能です。
ただし、バーチャルオフィスを利用している場合、本店所在地の最寄りの店舗が自宅から近いとは限らないため、ネットバンキングを利用するほうが便利であるに違いません。
ネット銀行であれば、ネットバンキングの利用に特に維持費等発生しませんので、その点からもおすすめです。
おすすめの理由④ 振込手数料が安い
ネット銀行の振込手数料は、メガバンク等に比べて安く設定されている場合がほとんどです。
同行宛はもちろん、他行に振り込む場合でも手数料が無料となる銀行もあるので、創業間もない頃はありがたいのではないでしょうか。
法人口座が開設できるネット銀行4選
ネット銀行で法人口座を開設するメリットは先述しましたが、ネット銀行の中でもすべての銀行が法人口座の開設ができるわけではありません。
ここでは、法人口座が開設できるネット銀行を4つ紹介します。
GMOあおぞらネット銀行
GMOあおぞらネット銀行は2018年7月に創業した比較的新しいネット銀行です。
どのような強みがあるのか、GMOあおぞらネット銀行のホームページと、GMOあおぞらネット銀行を紹介した他社の記事を参考にしてまとめました。
GMOあおぞらネット銀行の強み
GMOあおぞらネット銀行のホームページには、6つの特長として以下のことが記載されています。
①口座維持手数料無料振込手数料も安い
②強固なセキュリティ対策が可能
③直感的に分かりやすい画面構成
④銀行法人カードで今なら最大 1.5%キャッシュバック
⑤起業時に安心のサービス
⑥その他条件を満たせば最短即日口座開設
参照:https://gmo-aozora.com/promotion/lp/pre-input/
バーチャルオフィスを利用して新設法人を設立した方に多いニーズは、「早く口座を開設したい」、「手数料等を安く抑えたい」という2つだと思います。
そのため、最短即日で口座開設できること、口座維持手数料が無料かつ振込手数料も安いこと、法人カードを作って決済に利用すればキャッシュバックがあることは、大きな強みと言えるでしょう。
現在設立1年未満の法人の場合、他行宛の振込手数料が月20回まで無料になっているので、創業間もない新設法人にとてもありがたいサービスだと言えるでしょう。
また、新設法人にこうしたサービスを提供しているということは、むしろ新設法人でも口座開設がしやすいことの裏返しとも言えるので、バーチャルオフィスを利用して法人を設立したての方は、ぜひGMOあおぞらネット銀行での口座開設の申込をすることをおすすめします。
他社が紹介するGMOあおぞらネット銀行の特徴
創業手帳のホームページでは、審査担当者に法人口座開設のポイントを聞いているインタビュー記事があります。
参照:GMOあおぞらネット銀行の担当者に聞いてみた「法人口座開設の審査のポイントとは?」
こちらの記事には、口座開設の流れから資料作成のポイントまで余すところなく紹介されています。
私が上記の記事を読んで感じたことは、GMOあおぞらネット銀行は新設法人に口座を開設してほしいという気持ちがあるということです。
ふるいにかけるためというよりは、真面目に事業に取り組む意思がある法人には口座開設をしてほしいというスタンスで審査を実施していると感じました。
PayPay銀行
PayPay銀行は2000年9月に設立されたジャパンネット銀行が、商号変更した銀行になります(2021年4月)。
どのような強みがあるのか、PayPay銀行銀行のホームページと、PayPay銀行銀行を紹介した他社の記事を参考にしてまとめました。
PayPay銀行の強み
PayPay銀行は同一の事業所で20口座まで開設できることが大きな強みです。
規模が大きい企業はもちろん、新設法人であっても多角的に事業展開をする場合や、異なる商材をいくつかのサイトでわけて販売する場合などは、入金先を分けて管理することができるため、魅力的に感じるでしょう。
参照:https://help.paypay-bank.co.jp/hc/ja/articles/900002597923
他社が紹介するPayPay銀行の特徴
創業手帳のホームページでは、審査担当者に法人口座開設のポイントを聞いているインタビュー記事があります。
参照:担当者が解説!PayPay銀行の法人口座開設に必要な書類・審査基準のポイント
こちらの記事では、審査が通らなかった方の特徴をまとめていました。
私が上記の記事を読んで感じたことは、PayPay銀行も決してふるいにかけるためというよりは、真面目に事業に取り組む意思がある法人には口座開設をしてほしいというスタンスで審査を実施しているとうことです。
住信SBIネット銀行
住信SBIネット銀行は三井住友信託銀行とSBIホールディングスの共同出資で2007年に設立された銀行になります。
どのような強みがあるのか、住信SBIネット銀行のホームページを参考にしてまとめました。
住信SBIネット銀行の強み
住信SBIネット銀行のホームページには、4つの特長として以下のことが記載されています。
①手数料が安い
②来店不要で口座開設できる
③助成金・補助金支援サービスが利用できる
④決算書不要のオンライン融資
参照:https://www.netbk.co.jp/contents/hojin/
他社が紹介する住信SBIネット銀行の特徴
創業手帳のホームページでは、住信SBIネット銀行の法人口座のメリット、デメリットを解説している記事があります。
参照:住信SBIネット銀行法人口座の基本機能を解説!気になるメリットとデメリットは?
ほとんどのネット銀行に共通するメリット、デメリットかと思いますが、振込手数料が無料にあったり安かったりする一方で、ATMでの手数料は発生します。
なお、上記記事では審査の基準やポイント等の開設は特にありませんでした。
楽天銀行
楽天銀行は2001年に、国内で2番目に設立されたネット銀行になります。
どのような強みがあるのか、楽天銀行のホームページを参考にしてまとめました。
楽天銀行の強み
楽天銀行のホームページには、5つのポイントとして以下のことが記載されています。
①振込も受取もネットで効率的に管理
②総合振込(WEB-FB)で、大量の振込処理も効率的
③効率的な受取サービスも各種ご用意
④口座数は、ネット銀行最大級の1,300万口座
⑤セキュリティ向上でさらに安心
参照:https://www.rakuten-bank.co.jp/business/lp/making-efficient/
ネット銀行の中では歴史があるということで、開設口座数も多い印象があります。
そのため、クライアントも楽天銀行の口座を開設している場合もあり、それゆえに振込手数料等を削減できるメリットもあるでしょう。
他社が紹介する楽天銀行の特徴
創業手帳のホームページでは、スピードやコストカットが求められる創業期にはネット銀行がおすすめという内容で楽天銀行が紹介されています。
参照:低コスト&スピーディー! “ネット銀行”という選択肢のススメ
記事は2015年に執筆されたもので、おそらく今よりもネット銀行についての利用率が低く、信用度もあまり高くなかったものと思われます。
とにかく早く開設できること、低コストであることがメリットとして強調されていました。
4つのネット銀行の比較表
法人口座が開設できる4つのネット銀行を紹介しましたが、各種手数料などを表にしましたので参考にしてください。
GMOあおぞらネット銀行 | PayPay銀行 | 住信SBIネット銀行 | 楽天銀行 | |
月額維持費 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 |
振込手数料(同行宛) | 無料 | 55円 | 無料 | 52円 |
振込手数料(他行宛) | 145円 | 160円 | 145円 | 150円(3万円以上229円) |
ATM手数料(入金) | 110円/回 | 3万円以上無料 3万円未満は165円/回、 | 110円/回 | 220円or275円/回 |
ATM手数料(出金) | 110円/1回 | 同上 | 同上 | 同上 |
新設法人がネット銀行で法人口座を開設するために必要な対策
前提として、ネット銀行は申込から審査までがウェブ上、もしくは書類のみで完結しますので、対面審査がありません。
そのため、ウェブでの申込フォームの記載や提出書類によって口座開設の可否が決まりますので、相手に伝わる資料作成等、入念な準備が必要となります。
ネット銀行の法人口座開設にあたってアピールすべきこと、用意すべきことは次のとおりです。
信頼性、継続性、将来性をアピールする
まずは、法人としての信頼性、継続性、将来性をアピールすることです。
新設法人は実績がありませんので、代表者となる人物や取り組もうとしている事業が信頼に値するのか、創業後の継続性や将来性があるのか、といったことから評価するしかありません。
もちろん、継続性や将来性はあくまでも想像の範疇になりますが、それでもしっかりと数年後まで予測を立てていれば、事業に取り組む本気度がより伝わるでしょう。
最低限の準備としては、創業計画書を作成しておくことをおすすめします。日本政策金融公庫が公開している書式を参考に作成すると良いでしょう。
参照:https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html
もちろん、この創業計画書を添付するだけではなく、各銀行のウェブの申込フォームに該当する箇所にしっかりと計画を書き記すことで熱意は伝わるでしょう。
独自ドメインのウェブページとメールアドレスを取得する
独自ドメインでウェブページを作成し、またメールアドレスを準備すると良いでしょう。
業種によっては必要ないというケースもあるかもしれませんが、ウェブページは今や名刺代わりとなるものです。
ウェブ検索をかけてヒットをしないと「本当に事業をやる気があるのか?」といった疑念すら抱かれかねません。
事業内容、代表者の経歴、問い合わせフォーム、会社概要の4点を最低限記載した独自ドメインのウェブページとメールアドレスを用意することをおすすめします。
代表者の経歴と事業内容を絡めた資料を用意する
新設法人は、よほど規模が大きいグループの子会社ではない限り、代表者の信頼度が法人の信頼度に直結するといっても過言ではありません。
そのため、代表者がどういった経歴を持つのか、事業内容と絡めた資料を準備すると良いでしょう。
例えば、WEBマーケティングを担当する部署で会社勤めをしており、前職で受注していた一部の仕事を業務委託で引き継ぎために法人を設立した場合、前職での経歴と新設法人での事業内容に連続性があります。
前職との関連性がある事業内容だと銀行側からの信頼度も高まるでしょう。
もちろん、前職と全くの異業種にチャレンジする場合もあると思いますので、そういう場合は前職から新たな事業にチャレンジした熱意が伝わるようにまとめると良いでしょう。
発注書や請求書と入金明細など業務実態がわかる資料を用意する
新設法人がペーパーカンパニーではないことの証明として、既に事業が動き出していることを証明する資料を準備することは有効です。
法人名義の発注書や請求書等があるに越したことはありませんが、個人事業主からの法人成りの場合、個人事業主時代の発注書や請求書、それに伴う入金明細のコピーなどを準備しても良いです。
先方から法人名義の口座作成待ちといったケースもあるでしょうから、その場合は個人事業主時代の書類と法人成り後に締結し直した契約書等を添付すると良いかと思います。
とにかく既に事業が動き始めていることを伝えることで、新設法人であっても信頼を得ることはできるでしょう。
まとめ
新設法人が法人口座を開設する場合、口座開設までの早さや維持費や手数料などの実用面からネット銀行がおすすめです。
法人口座を開設できるネット銀行としてはGMOあおぞらネット銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行があります。
ネット銀行の口座開設はウェブからの申込フォームの送信や書類提出で完結するため、信頼性、継続性、将来性をアピールすること、独自ドメインのウェブページを作成したり、代表者の経歴と事業内容を絡めた資料を用意したりするなどの対策が必要です。