【弁護士必見】バーチャルオフィスの活用事例とNGパターンを解説!

目次

第1章:バーチャルオフィスを検討する弁護士が増えている理由

かつて弁護士事務所といえば、都心の一等地にオフィスを構え、受付スタッフが常駐し、来所者を迎え入れる「敷居の高い場所」というイメージがありました。
しかし、近年では働き方の多様化・コスト意識の高まり・オンライン対応の進展によって、バーチャルオフィスを検討する弁護士が増えています。


■ 独立・開業時の初期コストを抑えたい

新規登録や独立開業を目指す若手弁護士にとって、事務所開設にかかる家賃や設備費は大きな負担となります。
都心で物件を借りようとすれば、保証金・内装・通信設備などを含めて数十万〜数百万円の初期費用がかかることもあります。

この点、バーチャルオフィスであれば、月額数千円〜1万円程度で住所利用や郵便受取が可能で、コスト面でのメリットは非常に大きいのです。


■ 自宅住所を公開したくないというニーズ

自宅を事務所として登録できる場合もありますが、多くの弁護士が懸念するのはプライバシーの問題です。
インターネット上や名刺、登録情報として自宅住所が公開されることは、家族の安全や個人の安心に直結するリスクでもあります。

このため、自宅は実務拠点として残しつつ、外部にはバーチャルオフィスの住所を見せるという構成を検討する弁護士が増えてきています。


■ 地方対応・複数拠点展開の柔軟性

都市部に本拠を構えつつ、地方の依頼者にもアクセスしたい弁護士にとって、現地拠点の確保は大きなハードルとなります。
出張対応のために一時的な面談場所や郵便受取先が必要な場合、バーチャルオフィスの「拠点追加サービス」は大いに役立ちます。

たとえば「東京に本店、仙台にサテライト住所」といった形でクライアントに安心感を与えることも可能です。


■ コロナ禍を契機に進んだ「非対面型」相談

2020年以降のコロナ禍は、弁護士業界にもオンライン相談・非対面業務の波を一気に押し寄せました。
ZoomやGoogle Meetなどを使った初回相談、電話での受任、郵送や電子交付による書面提出が日常となった現在、物理的な“事務所”の意味合いも変化しつつあります。

これにより「バーチャルでも業務は可能では?」という思考に至る弁護士も多くなっています。


このように、バーチャルオフィスの導入を検討する弁護士が増えている背景には、合理性と柔軟性を求める働き方の変化が強く影響しています。

第2章:弁護士法が定める「事務所」の要件とは?

バーチャルオフィスの利用を検討する際、弁護士にとって最も重要となるのが**「事務所」として法的に認められるかどうかです。
この点において、弁護士には
他の士業と比べて厳しい規定**が課されています。


■ 弁護士法第20条における「事務所設置義務」

弁護士法第20条は、以下のように定めています。

弁護士は、日本国内に事務所を設けなければならない。

ここでいう「事務所」は単なる“住所”ではなく、実体のある執務拠点である必要があります。
具体的には以下のような要件が求められます:

  • 弁護士が実際に常駐・執務している

  • 依頼者との面談ができるスペースがある

  • 書類を保管し、守秘義務を果たす環境が整っている

このため、「住所だけ借りる」形式のバーチャルオフィスは、法的に求められる“事務所”の定義を満たさないと判断されます。


■ バーチャルオフィスが「事務所」と認められない理由

多くのバーチャルオフィスは以下のような形態です:

  • 執務スペースは提供されない(または共用スペースのみ)

  • 弁護士本人が常駐しているわけではない

  • 郵便物は代理で受け取られ、他利用者と共有される場合もある

このような環境では、弁護士法上の「事務所」としての実体がないとみなされます。
そのため、主たる事務所として登録することは、原則として不適格となります。


■ 各地の弁護士会による実務上の対応

弁護士会によって対応に差はあるものの、たとえば東京弁護士会の開業マニュアルには、明確に以下のような趣旨が記されています。

  • バーチャルオフィスでの開業は原則不可

  • 登録に際し、賃貸借契約書や執務環境の詳細確認が求められる

  • 実態が確認できない場合、登録申請は却下される

また、実務上も「バーチャルオフィスでの開業を希望したが、登録申請が通らなかった」という声は少なくありません。


■ 虚偽登録のリスクにも注意が必要

仮にバーチャルオフィスの住所を、実際には使用していないのに“事務所”として登録した場合、以下のようなリスクが発生します:

  • 弁護士会による事務所実体調査(抜き打ちもあり)

  • クライアントや関係者からの苦情・告発

  • 登録内容の虚偽記載による懲戒処分や業務停止処分

「登記できたからOK」と考えるのは危険であり、実態と登録情報が一致していることが大前提となります。

第3章:合法的に活用できるバーチャルオフィスの使い方【実例あり】

バーチャルオフィスを弁護士の「主たる事務所」として用いることは、弁護士法上認められていません。
しかし、補助的な利用であれば一定の範囲で活用が可能です。

この章では、法的な制限を遵守しつつ、バーチャルオフィスを上手に使っている事例を紹介します。


■ 1. 郵便物の受取専用住所としての利用

最も現実的で広く行われているのが、郵便物の受取・転送先としてバーチャルオフィスの住所を使う方法です。

【事例】

  • 登録上の主たる事務所は自宅や個室レンタルオフィス

  • クライアントに住所を開示する際、バーチャルオフィスの住所を使用

  • 郵便物は週1〜2回、自宅や実事務所に転送される設定に

このようにすれば、自宅住所の非公開を保ちながら、業務連絡の窓口を確保できます。
ただし、クライアントに誤解を与えないよう、「郵便受付専用」などの表記を添えるのが望ましいです。


■ 2. 地方対応のためのサテライトオフィスとして利用

都市部に主たる事務所を持つ弁護士が、地方のクライアントにも対応したいときに、バーチャルオフィスの地方拠点を活用するケースもあります。

【事例】

  • 主たる事務所は東京の賃貸オフィス(登録済)

  • 福岡・名古屋・札幌などにバーチャルオフィスを契約

  • 電話やWebサイト上に「●●支店」「対応拠点」として記載

このような使い方であれば、「事務所要件」を満たした上で、拠点数を拡張することが可能になります。

面談が必要な場合は、拠点の会議室(要予約)を一時的に利用することで、クライアント対応力も担保できます。


■ 3. 名刺・Webサイト上の住所表記に使用する

士業にとって住所の印象は“信頼感”に直結することがあります。
そのため、あえて好立地のバーチャルオフィスの住所を名刺やホームページに表記する弁護士もいます。

【実例】

  • 主たる事務所は登記可能なレンタルオフィス

  • 名刺には「港区南青山オフィス(受付専用)」と記載

  • 実際の相談や契約は、別途明示した執務拠点で対応

この場合、「虚偽表示」や「主たる事務所の誤認表示」にならないよう明確な表現が求められます。
事務所表記に関する苦情や懲戒事例もあるため、“誤解を与えない範囲”での記載が原則です。


■ 4. 会議室・応接スペースを面談対応に活用

一部のバーチャルオフィスは、会議室や応接室を有料・予約制で利用可能にしています。
これにより、事務所ではなくても、一時的な面談スペースとして活用することができます。

【実例】

  • 自宅では守秘義務上、面談が難しい

  • バーチャルオフィスの完全個室を予約し、初回相談などに対応

  • 必要な書類や機材は当日持参で運用

弁護士業務における「信頼感のある対面空間」は非常に重要であり、このようなスペースを活用することで外部からの印象改善にもつながります


■ 補助的な使い方には“実体”の補強が不可欠

ここまで紹介した合法的な活用法には共通する条件があります。それは:

「主たる事務所は別にあり、バーチャルオフィスはあくまで補助的役割にとどまること」

これを守る限り、バーチャルオフィスは弁護士にとっても実務的な利点があると言えるでしょう。

第4章:やってはいけないNGパターンとそのリスク

バーチャルオフィスは、使い方を誤れば法令違反・懲戒リスク・信用失墜に直結します。
ここでは、弁護士が絶対に避けるべきNGパターンと、その結果引き起こされるリスクについて、明確に示します。


■ NG①:バーチャルオフィスを主たる事務所として登録する

最大のNGは、「バーチャルオフィスの住所で弁護士登録を行う」ことです。
これは弁護士法第20条で義務づけられた**「実体ある事務所」**の要件を満たさず、虚偽の登録とみなされる恐れがあります。

【リスク】

  • 弁護士会による登録却下・登録抹消

  • 実態調査による是正指導、懲戒請求

  • クライアントからの信用喪失

実際、弁護士会の審査において、バーチャルオフィス単体の契約では審査が通らなかったという事例が多く報告されています。


■ NG②:所在地を偽って名刺・Webに表記する

名刺やWebサイトに、主たる事務所ではないバーチャルオフィスの住所を“代表所在地”として表記することは、誤認を招く行為です。

【典型例】

  • 「港区青山オフィス」などの記載に実態がない

  • クライアントが訪問したら、スタッフが対応せずトラブルに

  • 苦情→弁護士会への通報→懲戒手続き

表記する際は、**「受付専用」「郵便受取用」「会議室利用のみ」**など、実態に即した注記を添えることが不可欠です。


■ NG③:守秘義務を果たせない環境で面談・執務する

弁護士に課された守秘義務は極めて厳格です。
それにもかかわらず、共用スペース・受付なし・パーティションのみの環境で依頼者と打ち合わせを行うことは、重大な職業倫理違反にあたります。

【リスク】

  • 情報漏洩による損害賠償請求

  • クライアントからの信頼失墜

  • 苦情・懲戒・業務停止処分

特に刑事・家事・債務整理といったデリケートな案件では、完全個室・防音性・書類保管の厳格性が求められます。


■ NG④:実態のない所在地で業務を遂行する

たとえば、実際には自宅で執務しているにもかかわらず、バーチャルオフィスを「事務所」と偽って契約や受任を行うケース。
これは、依頼者に誤解を与える行為=信義則違反とみなされることがあります。

【結果】

  • 「実在しない法律事務所」としてSNSで炎上

  • 複数の苦情から弁護士会に調査され、懲戒に至る

  • マスコミ報道により社会的信用が消失

誠実義務違反信用失墜行為として処分対象になることもあります。


■ NG⑤:事務所実体調査を軽視する

弁護士会は、会員の事務所について実地調査や文書照会を行うことがあります。
その際、バーチャルオフィスでは以下のような対応が困難になります:

  • 常駐確認に応じられない

  • 郵便物や面談記録の管理体制が説明できない

  • 「本人不在」と記録される

こうした場合、「実態がない」と判断されれば、厳しい指導・指摘を受け、改善報告を求められるだけでなく、場合によっては業務停止や登録抹消に至る可能性もあるのです。

第5章:活用の前に確認すべきチェックリスト【登録前・契約前】

バーチャルオフィスを利用しようと考える弁護士にとって、最も重要なのは**「合法であるかどうか」「信頼を損なわないかどうか」です。
ここでは、トラブルを避けるために
契約前・登録前に必ず確認すべきポイント**をチェックリスト形式で整理します。


✅ チェック1:主たる事務所は実体のある拠点か?

まず最初に確認すべきは、**「その住所で登録して問題ないか」**という点です。

  • ☐ 完全個室の執務スペースがある

  • ☐ 面談・応対が可能な物理環境がある

  • ☐ 書類の保管場所・セキュリティ設備が整っている

  • ☐ 実際に常駐して執務する予定がある

→ ひとつでも☓がつく場合、バーチャルオフィス単体での登録は危険です。


✅ チェック2:契約内容は弁護士業務に対応しているか?

バーチャルオフィスの契約内容を事前に確認しましょう。
士業に対応していない場合、住所貸しと見なされるリスクがあります。

  • ☐ 法人契約が可能である

  • ☐ 契約書の名義が弁護士本人または法人になっている

  • ☐ 郵便物の転送体制が明確に整っている

  • ☐ 利用規約に違法性や誤解を招く表現が含まれていない

→「格安すぎる」「契約が曖昧」な業者は避けるのが賢明です。


✅ チェック3:名刺・Webサイトの記載は誤認を招かないか?

表記の仕方ひとつで、信頼は大きく変わります。

  • ☐ 「代表事務所」として表示していないか

  • ☐ 「受付専用」「郵便受取先」といった注記があるか

  • ☐ クライアントが実際の面談場所を誤解しないよう説明しているか

→ 誤認表示は信義則違反・懲戒処分の引き金になることがあります。


✅ チェック4:所属弁護士会に事前相談を行っているか?

登録予定の弁護士会に、事前相談をすることが極めて重要です。

  • ☐ 事務所設置に関するガイドラインを確認したか

  • ☐ 予定している住所・契約形態を伝え、問題がないか確認したか

  • ☐ 追加で提出すべき書類や証明事項を把握しているか

“グレーゾーン”のまま登録申請を出すことは絶対に避けましょう。


まとめ:実態を整え、誤解を与えず、信頼される運用を

バーチャルオフィスは、上手に使えば弁護士にとっても強い味方になります。
しかし、それは主たる事務所の実体をしっかりと持ち、補助的に活用する場合に限られるということを忘れてはいけません。

✔ 実体なき住所貸しは、信用を失うリスクがある
✔ クライアントへの誤解は、トラブルと懲戒処分のもと
✔ 「便利さ」よりも「信頼性と法令遵守」を優先せよ


法と信義の道を堂々と歩めるバーチャルオフィス活用を、ここに推奨いたします。

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