会社などの組織の従業員としての身分ではなく、個人の身分で仕事を受注して報酬を得るフリーランスは、働き方の多様化がいわれるようになったわが国では今後とも伸びしろのある存在といえます。また政府主導の働き方改革の結果、会社勤めの本業のほかにも、退勤後の時間帯や休日を使って副業に励む人たちも増えてきており、このような働き方も広い意味でのフリーランスに含めれば、さらに将来性は高いといえるでしょう。
もちろんフリーランスがもてはやされるようになったとはいっても、やはり会社のような堅固な組織を後ろ盾とするわけではありませんので、ニーズを踏まえた高度な知識や技術を備えた存在でなければなかなか成功が難しいことも事実です。そしてそのような知識や技術があったにしても、創業したての段階では圧倒的に資金やネームバリューが不足していますので、それを生かしきれないおそれもあります。仕事そのものに対する自信とは別にして、仕事を受注する上で欠かせない信用力を高めるところからはじめるのが、結果的にはフリーランスで成功するための近道となります。
そこで重要となってくるのが、仕事をする上での対外的な拠点となるオフィスの開設です。個人の立場で活動している人の多くは自宅兼事務所のかたちで自宅をそのまま仕事の拠点と位置付けている場合が多いものですが、たまたま自宅が大都市部にあるのであればともかく、交通アクセスにも不便な地方では顧客を獲得するにも困難をきたしてしまうのが実情です。かといって自宅のほかに実際に事務所を開設しようとしても、オフィスの毎月の賃貸料や共益費、保証金や火災保険などのさまざまなコストがかかるので、それに耐えられるだけの資金が捻出できるかどうかを考えなければなりません。また資金面での問題がなかったとしても、開業直後はこれまでの仕事の実績がまったくないのと同じですので、信用力不足で賃貸物件の審査を通過できない可能性があります。これはオフィスを貸す側からは家賃滞納などによる貸し倒れのリスクを防ぐためにぜひとも必要な措置ですが、借りる側にとってはかなりやっかいな問題です。
このようにオフィス開設で問題を抱えている場合に検討してみたいのがバーチャルオフィスの活用です。似たものにレンタルオフィスがありますが、レンタルオフィスは多人数が共同して、あるいは時間単位で区切ることを通じて、実際にあるオフィスの空間を借りることになるため、結局のところ一般的な不動産物件の賃借の亜流に変わりがありませんが、バーチャルオフィスはあくまでもバーチャル、すなわち仮想の存在としてのオフィスですので、住所や電話番号などの名義だけを借りるサービスと考えればよいでしょう。実際に作業ができる場所がないにもかかわらず、そのようなサービスを利用する必要があるのかといぶかしく思うのも当然のところがありますが、もちろん通常の事務所の賃借やレンタルオフィスとはまた違った、特有のメリットがあるからこそ成立しているサービスです。
バーチャルオフィスは自宅とは異なり、東京都心の一等地などをフリーランス活動のための住所とできる点がまずメリットといえます。自宅が地方にある人であっても、名刺やホームページ上では東京都心の住所を名乗ることができるわけですから、取引先に好印象を与えることができます。このような取り組みで受注を増やし、信用度を徐々に高めていけば、いずれはより大きな仕事のチャンスを獲得できることになります。信用度いう意味では、個人事業主から法人成りをする場合などに、自宅の住所ではなくバーチャルオフィスの住所で法人登記をする方法が使えます。ほかにも自宅をみだりに知られたない人にとっても、個人のプライバシーを守って仕事をするためにはたいへん都合のよいサービスですし、たとえ現在の自宅を何らかの理由で引っ越した場合でも、仕事の拠点までは動かさないで済むというメリットもあります。
バーチャルオフィスは仮想のサービスというのが原則とはいっても、実は部分的に現実のオフィスとしても使えるようなサービスが付帯していることもあり、これらを活用できることも大きなメリットです。たとえば郵便物が契約しているオフィスの住所に宛てて届けばオフィスの運営会社が取りまとめて保管してくれますし、外部から電話があれば自宅などの任意の場所に転送するか、または運営会社のスタッフに代理で受け付けてもらえます。ちょっとした打ち合わせや商談などで東京都心に出向く機会があれば、バーチャルオフィスの所在地にある建物のなかの会議スペースを貸し出してもらうことなどもできます。実際にフリーランスが仕事をする上では、この程度の最低限のサービスがあれば十分に事務所としても機能しますし、レンタルオフィスなどと比較してもコストはかなり安価に設定されていますので、コストパフォーマンスのよさでは大きな魅力です。
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