起業・経営

なぜ事業承継対策が必要? 円滑に進める事業承継の手順

2019年12月13日

(概要)
中小企業では、長期的視野を持って事業承継対策を実施していかねばなりません。特に後継者育成には、かなりの年月が必要と言われています。

事業承継の対策を具体的にどう計画・実行していくべきかを紹介します。

(本文)
日本を支えてきた中小企業が抱える課題とは?
日本では、全企業数の約9割が中小企業と言われています。雇用面でも約7割を占めており、日本の経済を支えています。

これまでに日本で開発された新しい技術の中には、中小企業で開発されたものも多くあり、今後もこれらの企業が存続することで、日本経済の発展が期待されます。

しかし、現在の中小企業は経営者や従業員が高齢化し、その成長に陰りが見え始めるなど存続が危ぶまれるようになってきました。

気づいてからでは遅い事業承継対策
戦後の日本経済の発展に大きく貢献した中小企業ですが、当時の若かった従業員たちは60歳を超え、中には70歳以上であってもその技術を持つ人が他にいないため、引退できずに働き続けている人もいます。

このような現状は、新しく社会に出て働き始める若者たちが、安定した大企業に就職したがることや、少子高齢化が進んで労働者の数そのものが減少傾向にあることが原因と考えられています。

現在の日本では、後継者不在で会社の操業停止に追い込まれる中小企業が増えています。会社を持続させるための人材確保と育成が急務となっています。

経営者たちも、今後は自分や従業員の生活を守るためだけに働くのではなく、会社のノウハウや技術を失わないように若い世代に引き継いでもらい、日本の経済を支えていく使命感をもって事業に携わる意識が求められます。

これらを具体化するために日常業務と並行して進めていくのが、事業承継対策です。

事業承継で経営者が実行すべきことは?
これまで培ってきた会社の財産を次の世代に引き継ぐためには、何をどのように進めていけばよいのでしょうか。

事業承継では、大きく分けると「ヒト(人)」と「モノ(資産)」の2つをそれぞれ引き継いでいきます。

【ヒト(人)】
現在の経営者から、後継者へ引き継ぐもの
・経営理念、リーダーシップ
・事業運営に必要な知識・技術・ノウハウ
・人脈

後継者は指名すれば終わりではなく、そこから事業承継が始まります。全ての引き継ぎが完了するには、どれぐらいの期間が必要かを考えて早めに人選をすることが大切です。

【モノ(資産)】
主に、事業の有形資産を後継者に引き継ぐことです。その内容は自社株、不動産などです。

多くの中小企業では、現経営者の個人所有の資産が事業で使われていることがあります。その場合、持ち主の所有権と経営権の分離が困難な時もあります。

また現在の経営者の親族間で、このような資産を巡って相続や分与で争うリスクが高くなります。後継者に確実に資産を引き継ぐために、他の相続人に対して相続予定の資産の代わりに現金を渡すなど、資産の分散を防ぐ準備をしておく必要があります。

事業の承継方法は、後継者によって変わる
事業承継を進めていくにあたって、その方法や手順は「誰を後継者にするか」によって変わってきます。

後継者になる人は、次のような人たちです。
・子ども
・親族
・従業員
・会社以外の外部から雇い入れる
※個人に引き継げない時は、会社を売却する方法もあります。

それぞれに引き継ぐ場合のメリットやデメリットは次の通りです。

【1:子どもや親族】
メリット
・従業員や取引先に受け入れてもらいやすい
・現経営者の自己満足度が高い
・事業承継に早めに着手できるなど、対策がとりやすい

デメリット
・子どもや親族の場合、後継者としての資質不足が問題になることもあるため、時間をかけて育成する必要がある
・相続人の数が多いために相続問題が長引けば、後継者への経営権の集中が困難になる

【2:従業員や会社の外部からの雇い入れ】
メリット
・親族に適任者がいない時の会社存続の方法で、社内外から広く人材を探すことが可能
・社内外の理解を得やすい
・従業員であれば、会社の事業などについて精通しており、意欲も高く、経営理念などの企業文化を承継しやすい

デメリット
・会社の株式の一定数を確保するには、後継者に資金力が必要
・中小企業の多くは、銀行融資を受ける時に経営者個人を連帯保証人としていることが多く、これも引き継ぐことになるので後継者の金銭的負担が増える
・銀行が、現経営者から後継者へ連帯保証人が変わることを拒否することもある

【3:会社の売却】
メリット
・自社で後継者がみつからない時の候補者探しに適した方法
・現在の経営者が、売却により利益を得ることが可能

デメリット
・希望条件で買い手が見つかりにくい
・経営理念や企業文化などを継承してもらいにくい

事業承継対策に要する期間とその手順
事業承継を進めていくには、3つのステップに分けて対策を実施していくのがポイントです。

【ステップ1:会社の現状の調査を行い、将来の見通しを立てる】
チェック項目
・キャッシュフロー
・資産状況
・株主や親族関係
・現経営者の所有財産(株式、不動産、負債)や個人保証の現状などの把握

【ステップ2:後継者の選出】
親族、従業員、社外の人の中から誰を選ぶかで、事業承継対策に要する期間や優先事項が変わってきます。
ステップ3の「事業承継計画」作成と並行して、選出、育成を進めます。

【ステップ3:事業承継計画を作成】
会社の中長期経営計画を作成し、その中に事業承継の時期や対策の実行計画も含めておきます。
計画書の作成や計画の実行は、弁護士や税理士といった専門家の力を借りながら進めていきましょう。

事業承継が始まる時には、後継者に経営権が移るように自社株を必要数所有させて、その他の資産についても引き継ぎを進めること、そのための資金調達や税金対策のサポートを進めていきます。

中小企業の事業承継では、事業に参加しない親族にも相続権があることから、新しい経営者が事業に集中できるよう、経営に必要な会社の資産を後継者に集中させておきましょう。
親族には法定相続分に見合う現金を用意するなど、現経営者が生きている間に相続争いを防ぐ対策を実行しておくことが大切です。

事業承継が始まると、後継者に誰を選ぶかでさまざまな税金が発生します。

親族か外部の人間の場合、継承時に贈与税や相続税が後継者に課せられます。会社の売却の場合は、売主の現経営者が株式を売却すれば所得税を支払わねばなりません。

事業承継税制の特例措置の利用など節税もしながら、少しでも負担なく事業継承を行うためには、事業承継は長期的視野に立ち、その対策を段階的に実行していくことが大切です。

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